SトロベリージャM
「なぁ、カジミノ。」


蚊が鳴くようなダイの声が聞こえた。


珍しいこともあるもんだ。


「どうしたの?」


ダイは、ドサッと音を立てて、椅子に腰かけた。


「俺って、自由がないんだよな。この先、自分のやりたいこともできない。
何のために自分が存在するのか分からなくなる。親のためか?会社のためか?そのために、やりたくないことをずっとし続けるのか?」


実野里は、そっと隣の椅子に座った。


「それは、ダイが決めることだよ。呪縛から解放されるのは、かなり難しいことだけどさ。もし、この会社を受け継ぐのなら、限られた範囲で自分の生きがいを見つければいいと思う。仲間と一緒に築き上げていくことも、人の生活に花を咲かせることだって出来る仕事なんだから。大企業の1番上に立つって、なかなかできる経験じゃないよ。それか、自分のしたいように生きるのなら・・今の自分を捨てなくちゃいけなくなると思う。今まで、築き上げてきたことも、何もかも・・。それでも、気持ちが変わらないなら、ダイの思うように生きていったらいいと思う。ごめんね・・わたし、ダイの苦労も知らないで、偉そうなこと言って・・。」

< 47 / 225 >

この作品をシェア

pagetop