ロンリーファイター



ー…



「…菜…ー菜、椎菜!」

「うわっはい!」



それから数日が経った、ある日の午後。出先である新宿の駅で名前を呼ぶ滝さんの声に、私ははっと我に返る。



「さっきから何度も呼んでるのに、何ボンヤリしてるんだよ」

「す、すみません」

「ったく…あ、あれだろ。お前もうすぐ誕生日だから浮かれてるんだろ」

「記念すべき30歳ですから…ってやかましいですよ!」



そう突っ込みながら、滝さんと共に人混みの中を歩いて行く。



(またボーっとしてた…)



もうすぐ自身も誕生日を迎えようとしている、今日この頃。あの日の一件以来、私はボンヤリしていることが増えた。



考えるのは、彼のこと。

姿を、声を思い出すと、ドキドキして…それだけで頭がいっぱいになる。

あの日から田口くんは試験期間だとかでバイトに来てないから、顔を合わせてないけど…次会う時はどんな顔で会えばいいのやら…!!



(確か明日はシフト入ってたよね…って、いけないいけない!仕事中!)



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