ロンリーファイター



新宿にある、大きなビル。その中のとあるフロアでは、今日もドタバタと忙しい足音と声が響いている。



プルルルル……ガチャッ、

「はい、株式会社エミューです。あ、はい少々お待ちください。稲瀬さん、お電話ですー!」

「おーい稲瀬!昨日の資料どこだー!?あれがないと話進まねーよ!」

「あれー!?明日会議で使うサンプル手配したっけ!?」

「はいはいはい!資料はあそこの引き出し!コピーして所持しておいて!サンプルは今朝届いてます!用意しておいてね!電話は今出る!」



社員の女の子から受話器を受け取ると、そのままの勢いで声を発した。



「お電話代わりました、稲瀬です!」



稲瀬椎菜、29歳。人気アパレルブランド・fem.を経営する、株式会社エミューの社員だ。

店舗経営部という、全国にあるショップの管理や経営をする部署にて、この歳にして役職は課長。……というのも、先輩が辞めたりする中で自然と繰り上がりでなったに近いけれど。

おかげで朝から晩まで、仕事に追われる毎日を過ごしていたりする。


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