竜王様のお約束
「え・・・と・・・。私は・・・。」


今一つ、状況が飲み込めていないコクリュウは、短い黒髪をかき上げながら、困惑した様子である。


突然乱入して来たコウリュウが去り、ハクリュウも居なくなった。


戸惑いを隠せないコクリュウに、ヤヨイはトコトコと歩み寄り、側にしゃがんで目線を同じくした。


「コクリュウさんも、ごめんなさいね。
ハクリュウは天界で、やらなきゃいけない事ができたみたいだから、もう少しここにいる事になりました。
人間界に帰る時は、また、声をかけさせてもらいます。
どうぞ、ご自分のお屋敷に、戻って下さい。」


不意打ちで、ヤヨイの向日葵のような笑顔を間近に見たコクリュウは、一瞬にして頬を真っ赤に染めてしまった。


女性の、こんな屈託のない笑顔に免疫のないコクリュウは、照れくさいやら、恥ずかしいやら。


「そ・・・そんな・・・滅相もない。
勿体ないお言葉です。」


耳まで赤くなってしまったコクリュウは、勢いよく立ちあがると、バクバクしている心臓を押さえながら、足早に部屋を出て行った。


そんなコクリュウの行動が、妙にかわいく思えて、ヤヨイはクスッと笑って見送るのであった。
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