竜王様のお約束
バツの悪いコクリュウは、イオリの視線に堪えられず、そっぽを向いて言葉を濁した。


「と、とりあえず、人間界へは行って来る。」


それだけ言うとコクリュウは、イオリの横をすり抜けて、逃げるようにその場を後にした。


「あっ!
お待ち下さい、コクリュウ様!」


地団駄を踏んで、憤慨しているイオリを振り返りもせずに、コクリュウはいそいそと自分の屋敷に向かうのであった。


「嘘は言ってない。
嘘は言ってないぞ。
人間界へは行くんだ。
そして、リョク様にお会いする。
大丈夫、嘘は言ってない。」


繰り返し、コクリュウは自分に言い聞かせ、自己正当化する事に、成功した。


「よし。
嘘は言ってないんだ、連れて来るとは言ってない。」


とは言え、心の中のモヤモヤは晴れないままに、コクリュウは人間界へと向かう羽目になった。


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