竜王様のお約束
白龍の天を突き刺すような怒りの咆哮が、天界中に響き渡った。


建物や地面が空気の振動に共鳴し、今にも崩壊しそうである。


その時ルビーレッドに輝く妖艶な龍が、颯爽と白龍の前に立ちはだかり、その太い尾を白龍の体にぶつけたのだ。


『怒りに身を任せるのはお止め下さい。
兄上!冷静なる対処を・・・。』


紅龍の強い思念と行動が、白龍の行動を留まらせる事に成功した。
光速の風をまとった空気の束で、コクリュウを切り裂こうとしていた自分に気付き、白龍は大きく開けた口をゆっくりと閉じた。


『・・・。
コウリュウ・・・礼を言う。
我はまた、同族殺しの罪を背負うところであった。
リョク、悪かったな。
話を聞こう。』


緊迫した空気が消えていくのは、王宮へも充分に伝わってきた。
王宮の紅い部屋から一部始終を見守っていたヤヨイとイオリは、お互いの視線を確認し合って安堵のため息を吐いた。


「ひとまず安心したわ。
さすがコウリュウさんね。
あっという間に沈めちゃった。」


「まぁ、ヤヨイ様ったら!
そんなの当然ですわ。
だってコウリュウ様ですもの。」


白銀・紅・新緑・漆黒の四体の龍がこちらに向かって游ぐ姿を見ながら、二人はクスクスと笑いあった。
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