陽炎がゆれる
「あ~超ダルいんだけど~マラソン大会なんてこんな暑い時期やる?もうなくそうよ~」


梅雨明けが告げられ真上から照りつける太陽と、上空にそびえ立つ入道雲が走る前から体力を消耗させた。


鮮やかな緑色に広がる田園から吹く風が、一瞬の涼しさを運ぶ。



この学校の伝統行事。誰が考えたのかこの暑い時期に行われるマラソン大会。


不思議なことに暑さで倒れるものがなく、今だになくならず続いている。


完走しないと成績に影響するという、嫌がらせとしか思えないルールで全生徒が参加させられる。



最後まで諦めない。困難に立ち向かう精神。そこをねらっているらしいが、ほかのことでそこをねらうのは無理なのだろうか・・・・。



誰一人前向きな想いを抱かない中、スタートの合図でタラタラと人の塊が走り出した。



「コラ~!少しぐらい気合を見せろ~」


そう言って直哉は私の頭を軽く小突いて抜いていった。


「いった~い!何すんのよ~!!」走り去る背中に叫んだ。


直哉とは3ヶ月前に付き合い始めた。


委員会が一緒で、話すうちに同じバンドが好きだったりと共通点がいくつかあり、直哉の方から告白してきた。


「はいはい。余計に暑苦しいのでやめてくださる?」


一緒に走っている紗栄子と栞が本当に迷惑そうにぼやいた。
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