†captivity†(休載)


「でもそれは、奏多くんの過去だけど、奏多くんの過去じゃない」

「なに、いってるの?」

「奏多くんが話さなきゃ、奏多くんから聞かなきゃ、意味ないんだよ。奏多くんの感情がなくちゃ、奏多くんの過去じゃなくて、単なる滝澤く……じゃなくて、あの人の過去になるから」



ヤバいヤバい、個人名はさすがにヤバいよね。

でももう言っちゃったけど、苗字だけだし……。




「たきざわ?」

「……のんのん、奏多くんなに言っちゃってんの?誰それよくわかんないあたし」



これでも全力でごまかしてるつもりだ。

後で制裁があってもあたしは責任とれないし。



「……たきざわ」



奏多くんはどうやら、「たきざわ」に反応しているご様子。

ちょっとそわそわしている。



「和歌、知り合いなの?」

「ち、違うよ、知らないよ」

「知ってるんだ」



にこっ、笑った奏多くんに、もしかしたら滝澤くんは名前を出してもよさそうな人なのかもしれないと思った。





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