†captivity†(休載)


「奏多」


今度は東先輩が奏多くんを呼んだ。

その声に答えて、奏多くんは首を傾げる。



「奏多にとって、彼はどんな存在?」



彼というのは、灯くんのことだろう。

あたしにはお節介とか言っておきながら、奏多くんにはちゃんとした質問をした東先輩。

この扱いの差が地味に悔しい。



東先輩の真剣な視線が、奏多くんを捕らえる。

奏多くんも、可愛い瞳をまっすぐ東先輩に向ける。



「幼なじみ。使用人……でも、大切」

「大切?」

「大切」



その言葉に、眉をひそめる東先輩。

どうして、納得してくれないの。

どうして逃げるの。




でも奏多くんはまた、言葉を続けた。





「悟、自分の気持ち、認めてあげて」



優しく、優しく、そういった。



「悟が、悟をいじめちゃだめ」



基本無口な彼が話すときは、大切な人に関して、なにかを伝えたいとき。

東先輩に伝えようとしてる。



「悟が痛いのは、ここにいるみんなも痛い」

「……」

「心も、痛い」



直後、教室の扉が開いた。

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