†captivity†(休載)


静かな廊下に、あたし達の声が響く。

二人しかいない教室は、やっぱり少し物足りない。



「和歌、一つだけ、お願い聞いてくれる?」

「う……内容によります」

「大丈夫、困らせるようなことじゃないから、ね?」



灯くんは首をかしげておねだりしてくる。

う……少し可愛い。



特に断る理由もないので、こくりと一つ、頷いた。



「和歌」

「うん、な、なに?」

「もう一度友達になってくれないかな?」



それは、あたしが願っていたことでもあった。



「友達……」

「和歌も、ずっとこのまま縁を切るのは嫌でしょう?俺もこのまま和歌から離れるなんて嫌なんだ」



灯くんも、まだ友達でいたいっておもってくれているのか。

なんて思っていたけれど。



「スキあらば緒方先輩から奪うつもりでいるんだけどね」



諦めたわけではないようだ。



「スキなんて、きっと緒方先輩なら作らないと思うけど」

「ちょっと敵が強過ぎるかな。でも和歌を振り向かせることが出来れば、俺の勝ちになる」

「どうだろうね。未来のことは、わからないね」



そう話した後は、灯くんが家まで送ってくれると言って、二人で帰った。






人を振るというのは、人を傷つけることをわかっている上で、それでも尚ハッキリと告げなければいけない。

相手の誠意を受け、こちらも誠意で返さなければいけない。



そう、傷付けることをしてしまうしかなかったのだ。



……罪悪感に胸が締め付けられる。

振るという行為は、こちらも……苦しかった。
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