†captivity†(休載)


From 知歌:
お母さんには、和歌が悩んでいて今日は先輩の家にお世話になってると、一応話してあるけど
心配させないように、ほどほどにね





知歌が悩み、苦しんでいた時、一番の理解者になっていたのは母だった。

知歌が休んでいた間、本をたくさん読んでいたり、様子を伺って心配していたり、知歌への対応を教えてくれたのも、全て母だった。



心に抱えている問題を、決して軽い気持ちで見てはいけないことを、身に染みて理解している、母だ。



「お母さん…」



心配させていたのではないか、知歌が回復して来たとはいっても決して気は抜けない、私の存在が負担になってはいけない、あたしはお姉ちゃんだから。

あたしは、お姉ちゃんなのに。

しっかりしなきゃ、いけないのに……。



「和歌?」



あたしの様子を伺いに来たのだろう、開けっ放しのドアの奥から母が部屋を覗いていた。

体がビクつく。

カーテンの閉まったままでいる薄暗い部屋の中、灯りはケータイの液晶画面のみ。

母がわざわざ部屋まで来てくれたのだ。

心配して、くれていたのだ。


でも

ごめんなさい。



「和歌、もしかしてまだ悩みが──」

「ごめんなさい」



ごめんなさい

ごめんなさい

心配させてしまって、ごめんなさい。



能天気に、浮かれて、心配かけて、迷惑かけて、周りのこと、なにも見えてなくて──。








ふわり、頭に乗せられた手。



「あなたたち双子は、ほんっと思考回路が一緒ね」



ぽんぽん、優しく頭に乗せられている手。

なんで責めないの……母の思いやりから潤む視界。

涙が、零れそうだ。
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