†captivity†(休載)
心くんは優しすぎず、最低すぎず、どこかで常に相手の気持ちを優先して行動している。
それはまだ短期間しか一緒の時間を過ごせていない私にもわかる。
いや、たまに暴走はするけど。
暴走しても、ちゃんと話を伺ってくれる。
そういうところが──
「で?」
「え?」
その手に持たれている紙袋を持ち上げる。
「これ、買った分全部入ってんのか?」
プレゼント……!!!
「い、一旦返してください!」
「俺のも入ってんだろ?」
「まって!いいから!まだ見ちゃダメなんです!心くんの分出しますから!」
プレゼントを先に相手に見られてしまうのはなんか違うから、ね……!!
ちゃんと渡したいから。
ちゃんとしたあたしの言葉と、雰囲気と、そういうのも含めて。
ほぼ奪い返したに近い紙袋の中から、心くんの分を取り出す。
というか全部プレゼント用の包装紙に包まれているんだけど、あたしのはサイズが小さいからすぐわかった。
中にもう1つ紙袋が入っていたので、それに入れて心くんに渡す。
……いやたぶん、渡した所でプレゼントとして返ってくるんだろうけど……。
「おう、ありがとな。で、コレ」
「お部屋に持って行っていいですよ」
「は?」
「心くんの所にお泊まり……なんですから、あの、その時に……」
じーっと見つめてくる瞳、合わせることが出来ない。
これはもう、約束の確定だし、泊まるし、部屋まで行っちゃうことの了承まで含んでしまっている。
……あれ、和歌さん実はそこまで意識して出した言葉じゃないけど、誘い文句お上手なのでは……!?
いやいや、落ち着け和歌、心くんがそこまで気付いているとも限らない……!!
「和歌」
「は、はい!」
「……」
心くんは悩むような素振りを見せてから、また向き直って言った。
「お前、今日一旦家帰って、必要な荷物まとめてもっかい来い。俺はその間に薬局行く」
「はい……?」
「まだ早いかと思ったが……」
「……??あ、それなら先輩と奏多くんから頂いたフルーツタルトが食べられますね!」
心くんも薬局とか行くんだなぁ。
薬局は静かなとこもあるから行けるのかなぁ〜。
なーんて、わくわくてかてかしていたこの時のあたしが彼のこの行動の意味を知るのは、数時間後。