†captivity†(休載)


というか、まず人混みのあるところに心くんが行きたがらないだろうし、そうなると自動的にそこの二人も付いて来なくなるだろう。



でもそうするとなぜプールならいけると綾愛さんは思ったのだろうか?



「いや、それでプールなら付いて来てくれるという保証は……」

「和歌さんが苦手とするものなら、兄は付いて来てくれるはずです」

「それはまさかあたしを嘲笑って楽しむために……?」



ふと、あたしがプールを怖がっている様を見た東先輩が鼻で笑うシーンを思い浮かべ、顔に両手を当てて絶望する。

嫌だ、見られたくない、鼻で笑われたくない……。



「いえいえ、嘲笑うなんて……表面上ではするかもしれませんが、本心からはしないですよ、たぶん」



たぶん??



「私が言いたいのは、庇護欲を煽れば付いて来てくれるんじゃないか?ということです」

「庇護欲……」

「つまり危なっかしい和歌さんを、兄は放っておけないはずなんです」



本当に……?と疑問の残る部分もあるけれど、確かにあたしの怪我の心配をしたり、先程までの話を聞いてる限りでも世話焼きの面があることは、ここにいる全員が認知している。

それでも、本当にあたしで釣れてしまうのか?という疑問も残る。



「プールがアリなら海もアリじゃないんですか?」



軽く手を挙げた灯くんがそう質問するけれど、え、待って、気になるところはそこなの?

本当に?え、あたし以外却下する人本当にいないの?



「あぁ、海よりもプールの方が動きやすいんですよ」

「動きやすい……?」

「はい、施設的に。その辺はこちらで後々お伝えします」



施設的に……???

クスリと笑う綾愛さんは「ということなのでその日までに水着の用意を──」なんて話を進めてしまう。



どうやらその詳しい事情は、省かれてしまうらしい。

そして私の意見も見事に流され、呆然としているうちに解散の流れとなっていた。



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