†captivity†(休載)


去年……てことは、緒方先輩が高校入学した時だとして、あたしが中学3年で受験勉強に勤しんでいる頃で。



「もしかして、あたしがあそこに住んでること、去年から知ってたんですか?」

「あぁ。知ってたな」

「あたしは緒方先輩のこと、多分知らなかったんですけど」

「そりゃ、遅刻して行くし、帰りも夜中だったり昼だったりだからな」



ダメな人!!

この人典型的なダメな人だ!



「なんであたしのこと知って……ってもしかして例の、前に会ってたらしいって話と関係あるんですか?」

「たまに見えてた。休みん時とかな」



家を知ってた謎は、なんとかわかった。

名前を知ってる理由も……まぁわからなくもない。

門に書いてあるんだから知りたい放題だ。



と、そんな話をしていたら、いつの間にか家の前に着いていた。



「ありがとうございました。じゃ……ん?」



帰ろうとしたあたしの服の裾が、引っ張られた。

振り向けばなんと、奏多くんが掴んでいる。



「か、奏多くん?」

「奏多、離したくないみたいだね」



東先輩にこくり、奏多くんは頷いた。

いやいや、コクリじゃないでしょうよ。

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