†captivity†(休載)


顔だけ振り向いて、緒方先輩に聞く。



「なんですか?」



少し、自分が緊張しているのがわかった。

心臓が、少しだけ、速い。



「和歌」

「なんですか」

「和歌」

「だからなに」



緒方先輩の目が見れない。

なんとなく彼の雰囲気から、目を合わせづらいって思った。





「呼べよ、俺のこと」

「……緒方先輩」

「下」

「え?」

「下、呼べ」



下、ということは……。

名前?



なんで名前?



「呼び方なんて、いいじゃないですか、なんでも」

「俺を思い出すヒントだとしても、呼ばない気か?」



ヒント……?



「俺はお前を和歌って呼んだ。お前も俺を名前で呼んだ」

「……」

「呼べよ」



名前は……知ってる。

でも、なんだかそれは、緒方先輩とは別物のような感じがして、呼びにくい。



緒方先輩は、あたしの中では緒方先輩だ。
< 76 / 392 >

この作品をシェア

pagetop