瑠哀 ~フランスにて~
『ごめんなさい、変なことに巻き込んでしまって。

サクヤだって思うことがあるはずなのに、

何だか私が無理矢理このことに引き込んだみたいで……。

私はあなた達に甘えているから、本当は迷惑なのに、

そう言えないのかもしれない――って思ってる…』

『そんなんじゃないんだ。そんなことじゃ―――』


 哀しそうに朔也を見上げている瑠哀を見て、朔也は次の言葉を失っていた。


『――そう、じゃないんだ。

ただ――、ただ、俺がバカだったんだ。

どうしていいのか判らなくてね。

今は、何を見つけなければならないのか判ったから、

二度とあんなふうに君に八つ当たりなどしないと誓うよ』

『見つけるもの…?』



 瑠哀は朔也が何を言いたいのか掴めなかった。

 朔也は小さく頷き、ゆっくりと顔を近づける。



『きっと、それを見つけるのも、そう、難しいことじゃないと思う。

―――ああ、やっぱり君の香りだ。

ずっと気になっていたんだ。

優しくて、とてもいい匂いだから。――行こう』


 朔也は瑠哀の手を握り、歩き出す。



(なに、今の……??)



 耳にキスをしたのだろうか。

 それとも、その髪の匂いを嗅いだのだろうか。



 どちらにしても、突然、なんなのだろう……??



 瑠哀は呆然と朔也に手を引かれるまま、歩いていた。
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