瑠哀 ~フランスにて~
「カズキグループとあなたがビジネスをしているなど、知りませんでしたわ」

「いえ、そうではないのです。

ただ、あの彼があなたと一緒にいたもので、カズキグループが動いて――――」



 いるのか、と言おうとして、ヴォガーは口を閉ざす。

 こっちを見つめている瑠哀の視線に気がついたからだ。



 その瞳は凄艶な色を浮かべ、甘くユラユラと揺れながら男をそっと誘っていた。



 瑠哀はゆっくりと肘をテーブルに乗せるようにし、首を傾けながら頬をついた。

 その間もずっと男から目を離さず、その瞳が突き刺すように真っ直ぐ男を射っていた。



 その小指が動き、瑠哀のやわらかな唇が微かに開きその指をそっと噛む。



 男は瑠哀のそのゾッとするほど冷たい微笑に魅入っていた。

 瑠哀の動かす指に沿って、男の口が開く。



 コクリと唾を飲み込むのが聞こえた。


「それで、カズキグループがどうなさったのです?」

「え?

―――ああ、ただ、あのカズキグループの御曹司が、あなたと一緒にいたもので、

マーグリスに関係があるのかと思いまして―――」

「まあ、お仕事熱心な方なのね」



 瑠哀は、ふふ、と艶やかに微笑んだ。


 男は言葉も忘れて呆然としたまま、その黒く妖しく揺れている瞳に陶然と酔っていた。
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