瑠哀 ~フランスにて~
『ルイ、なにか話すことはない?』


 瑠哀は目線だけを上げ、少し考え込むようにする。



 朔也の表情はなにかを気付いているようだった。

 その瞳は、瑠哀が話してくれるのを静かに待っている。



『……本当は、私が殺されるんだったの』

『ルイ、そんなに自分を責めるんじゃない。

あれは、激情したケインがやったことだ。

君には関係ない』


『でも、私が…その引き金を引いたわ』

『それは、仕方が無かったんだ。

ユージンを守らなければならなかった。

遅かれ早かれ、ケインは牽制される。

ユージンが正式な後継者だからね。

あんな狂った奴のせいで、こんなことに巻き込まれた君の方が可哀相だ。

君がしたことじゃない非に責任を感じる必要などないんだよ』


『そうじゃ、ないの。

私なの、殺したかったのは』


 朔也は眉を軽く上げる。


 瑠哀は淡々とした様子で言う。


『私だったの、殺されたのは。彼女は、私の身代わり』


『なんだって―――!?』
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