瑠哀 ~フランスにて~
『―――ああ、ここだよ』


 霞月が指した建物を見て、瑠哀は少々目を見張っていた。


 こんな街のど真ん中に、かなり広いギャラリーがあったのだ。

 大きなウィンドーから見える奥に、絵のようなものが何点か飾ってあるのが見える。



 この見える横幅よりも奥行きの方が長いのだろうか。

 とにかく、この場所でこれだけのスペースなのだから、かなりの土地代ではあるはずだ。



『さあ、どうぞ』


 霞月に促されて、瑠哀は中に足を入れる。


 入り口近くにいた女性が霞月に笑いかけ、何かを話している。


 瑠哀はそこを離れ、一番、近くにあった絵に歩み寄った。絵の下のプレートを読む。


『……赤い、紅の砂漠??―――ピエール・デ・フォン――』


 テーヌ――と読みかけた時、上から声が降った。


「ルイ!」


 見上げると、螺旋階段の上の方にピエールが立っていた。

 ピエールは足早に階段を下りてきて、ルイの前に駆け寄って来た。



「ルイ、よく来てくれた。会えてうれしいよ」


 相変わらずその目は何の色も表していなかったが、どうやら瑠哀は歓迎されているらしい。


「その絵に興味がある?欲しかったら、あげるよ」


 瑠哀は意味がわからず微かに顔をしかめるようにした。


 ピエールはそれを見て、薄く笑う。


「ようこそ、我がギャラリーへ」
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