瑠哀 ~フランスにて~
『いい天気。天気が良過ぎて、日に焼けちゃうわね』


 瑠哀は空に向かって伸ばした両手を見ながら、くすり、と笑う。


 今年の夏休みは、フランスで過ごしている。

 瑠哀の親友のビクトリアは、アメリカに留学している学生だった。

 その彼女の実家はフランスにあり、毎年、夏は実家に帰るのだが、今年は瑠哀も伴って帰京したのだ。



 夏休みが始まると同時に、瑠哀はビクトリアの実家を訪ね、そこでステイして、約二ヶ月をビクトリアとビクトリアの家族と一緒に過ごしていた。


 最後の一ヶ月は、色々とまわってみたい、と言う瑠哀の希望で、瑠哀一人だけ今はパリを訪れている。


 こんな有意義な夏休みを送れるのも、瑠哀が必死でしたアルバイトと、父親の少なからずの援助のおかげだった。


『Dadyに感謝しなくちゃ』


 ふふ、と嬉しさから笑みがこぼれ、笑みが残るその口元で小さく呟いて、瑠哀は静かに瞳を閉じた。

 少し顔を上げるようにして、暑い日差しのシャワーを受け止める。



 体中がエネルギーを吸収しているかのように不思議な気分に包まれて、しばしの間、瑠哀はその心地良さに身を任せていた。
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