瑠哀 ~フランスにて~
「―――…マドモアゼル・ミサキ…。ご無事で」



 はあ、と安堵の溜め息を吐き出して、瑠哀のすぐ傍にはマーグリスが来ていた。

 セシルに付き添われながら杖をつき、ぎこちない足取りで瑠哀の方にまた少し寄る。



「ご無事で…。本当に、良かった」

「―――起きても、大丈夫なんですか?

リチャードに盛られた薬とて、まだひどいのでは?」



 安堵に胸を撫で下ろしかけていたマーグリスの顔が、

その一言で、一瞬、虚を突かれたような表情をみせた。



「彼らは大丈夫だよ、ルイ。

それから、子供も、大丈夫だ」

「本当?―――あぁ、良かった…」


「君は、他人を心配し過ぎだよ。まったく。

―――それより、あいつらはどうしたんだ?」

「自滅――したって、サクヤが――」

「自滅?――ふん、身の程知らずが」

「でも、ケインは――リチャードが銃で撃って―――。

病院に行けば、まだ、間に合ったかも――」


「あんな男に情をかける必要などない。

死んで当然だ」

「そんな――」

「これだけ君を苦しめた報いは、その程度でも足りないくらいだ」

「ピエールっ」


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