瑠哀 ~フランスにて~
「そう、安心はできないんです。

あの男達は、本気であなた達を探していた。

そう簡単に諦めるような人間には見えませんでした。

もしも、いまだに、どこかで私を見張っているとしたら、

私はあの男達にあなた達の所に連れて来てしまったことになる…」


 母親は絶句した。


「申し訳、ありません……」


 瑠哀は辛そうに顔を歪め、うつむいた。


「あなたの……あなたの、せいじゃありません。

―――オォ…、なんということでしょう………」


 母親は両手で顔を覆い、激しく首を振った。肩も震えているように見える。


「もし――良ければ、なぜ狙われているのか、話していただけませんか?」


 母親は怯えた目を上げて、瑠哀を見返す。


「もしかしたら、私でもなにかの役に立つかもしれません。

一人で苦しむより、他に助けがあったらそれに賭けてみるほうが、

困難を乗り切れるかもしれないでしょう?

―――話していただけませんか?」


 瑠哀の優しく力強い言葉に、母親は涙を流した。


「………ありがとう、ございます。

…お話し、します。わたしの知っていることを―――――」


 そう言って、瑠哀は語られる内容に黙って耳を澄ましていた。
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