瑠哀 ~フランスにて~
 それで、瑠哀は、彼女も狙われているかもしれない、と言えなくなってしまったのだ。

 彼女の場合、狙われているのは命の方だ、などと言ったら、あのまま卒倒しかねない様子だったからだ。



「どうやって、彼に会うの?

セシルの話だと、電話した時でさえすぐに切られた、と言っていたわ。

彼の家に押しかけて行っても、会ってくれるのかしら?」

「門前払いされるだけかもしれないな。

もう少し有効な手段じゃないと、ちょっと無理だろう」


 有効な手段、ね………。それがあるのなら、教えてほしいものだが。


「有効かどうかは判らないけど、機会ならあるかもよ」


 え、と瑠哀はピエールを見返した。


「二日後、カンヌで芸術祭を祝ってのセレモニーが開かれる。

要は、ここらの名士が集まって、親交を深めましょうパーティーなんだけどね。

彼がここらで名の知れた富豪なら、必ずそういった集まりには参加するはずだ。

外聞を気にするからね。

顔を出して、愛嬌を売らなければならない。

そこなら、無闇に追い返したりはしないだろう?」

「でも、どうやってそのパーティーに入り込むの?

二日後でしょう」

「僕の所に招待状が来ている。

これでも、一応、フランスで名の知れた芸術家なんでね。

僕は興味無かったんだが、こうなれば出席しなくてはならないだろうね。

それも、君次第だけど」

「私、次第?」
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