森の人
「そうなんだ。凄いな。茂は」

「それに比べて俺なんか…」

澤山を、自分よりもずっと大きく感じる拓也。

「何となく進学して、何となく就職して、何となく結婚して家庭を築いて…」

「部活も、みんなが入っていたから何となく入って、でも、練習についていけず途中で辞めて…」

「部活しているみんなみたいに、夢中になれるものも、茂みたいな将来の夢も、何もないよ」

「きっと俺は、これから先も、そんな中途半端で、何もない人生を送るんだろうな」

自分の小ささに、自己嫌悪に陥っていた。

そこにいる拓也は、爽やかな笑顔はなく、暗い表情で背筋を曲げてうつむいている。

それはまるで、人生を諦めた老人のようだった。

そして再び背もたれにもたれかけると、空を見上げ、遠くを見つめた。


「だったら、探せばいいじゃん」


拓也の沈みきった心に、一筋の光りが射した。
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