極上御曹司のイジワルな溺愛

「あ~そうそう。薫さんが、お帰りになってるんですよ」

急に思い出したのか手をパチンと鳴らすと、千夜さんは慌て玄関の中へと入っていってしまう。

「はあ!? 兄貴が帰ってるって、どういうことだよ?」

「薫さん!?」

ふたり同時に声を揃えると、蒼甫先輩と顔を見合わせた。

薫さんとは、雅苑の関連会社『MIYABI』の社長で蒼甫先輩の実のお兄さん。歳は確か今年で三十五歳。身長百九十センチ超えの長身で、異国情緒漂うイケメン。

温厚で誰にでも優しくて気さくで明るい性格は、蒼甫先輩とは違った意味で信頼されている。

でも薫さんって確か今年の春から拠点をアメリカに移し、しばらくは帰ってこないといっていたはず。なのにどうして、こんな忙しい年末に帰ってくるわけ?

雅苑のウェディングドレスのほとんどは、アメリカで活躍している新進気鋭のデザイナー冨士原里桜(ふじはらりお)の作品で、あっちにいるほうが仕事をしやすいと言っていたのに。

「嫌な予感がするな」

蒼甫先輩の言葉に苦笑すると、よくわからないまま中に入る。



< 100 / 285 >

この作品をシェア

pagetop