極上御曹司のイジワルな溺愛
もし今ここに蒼甫先輩がいたらきっと、『考える前に行動しろ』と言ったに違いない。
ひとりで考えたって答えなんて出ないんだから、悩むより当てって砕けろだ!
自分そう言い聞かせると気持ちを切り替え、彼女に向き直る。
「……溝口さん。本当に、何か心配していることがありませんか?」
興味本位だと勘違いされないように、同じ質問をもう一度繰り返す。
すると彼女は驚いたように目を見開き、私の顔をまっすぐ見つめた。
「本当にって……。里中さん、何が言いたいんですか? 私たちは幸せになるために結婚するんですよ? 今になっ
て心配事なんて、あるわけないじゃないですか!」
いつもは穏やかに話す溝口さんの棘がある言い方に、これ以上は何を聞いても無駄だろうと口を噤む。
「梨加、どうしたんだよ? 里中さんは梨加のことを心配して聞いてくれてるんだろ?」
「そんなこと康生に言われなくたってわかってる。わかってるけど……」
溝口さんの顔が、見る見るうちに曇っていく。
こんな顔をさせるつもりじゃなかったのに……。
自分のしたことが間違っていたのか。
心の中に、後悔の文字が広がっていく。