極上御曹司のイジワルな溺愛
「まあまあ椛さんも、ちょっと落ち着いて。これでも食べて、気持ち静めて」
そう言ってマスターがカウンターテーブルに置いたのは、ワンプレートに盛られたジャンバラヤとカラフルなサラダ。その横にはハーブの香るチキンソテーが添えられている。
「なんですか、これ! もう見た目だけで美味しそうなんですけど!」
「現金なやつ」
蒼甫先輩がそうポツリと呟いた声が聞こえたが、もうそんなことかまっていられないぐらい美味しそうだ。
スプーンでそれを掬い、大きな口を開け一口で頬張れば、スパイスの香りが口いっぱいに広がった。
「どうだ、旨いだろ?」
「はい、最高です。肉や野菜の旨味が米一粒一粒に染み込んでて、もう止まりません!」
私の言葉を聞いて、蒼甫先輩は満足そうに頷いた。
作ったのはマスターなのにそんな顔するなんて、先輩って面白い。
クスッと笑いながら顔をあげるとマスターと目が合い、変なところを見られたと慌てて顔を真顔に戻す。
でも遅かったみたいで……。
「可愛いねぇ。椛さんって、いくつ?」
「……二十九です。思ったより、結構いってるでしょ?」
自虐ネタをぶっこみ、苦笑してみせた。
「まあ確かに年より若く見えるけど、可愛いから許す!」
「ありがとうございます」
何を許されたのかわからないけれどマスターにお礼を言うと、蒼甫先輩に頭をゴツンと小突かれた。