極上御曹司のイジワルな溺愛
見た目は人の良さそうなオジサマだけど、この人かなり腹黒かも。敵に回さないほうが、よさそうだ。
口の中に入っていたジャンバラヤをゴクリと飲み込み、モヒートで流し込む。
「マスターと蒼甫先輩、付き合いは長いんですか?」
蒼甫先輩がいない時間を埋めたくて、ありきたりな質問をしてみる。
「もう十年になるか。初めてここに来たときはまだ学生だったが、もう今の蒼甫が出来上がっていたな」
懐かしそうに話すマスターを見て、私も頷いた。
それは私も、よく知っている。
自分の未来を見据えていた蒼甫先輩は、学生の頃から何事にも熱心で、今と少しも変わっていない。
そして、私と蒼甫先輩の関係も──
最後の一口を食べようとしていた手が止まり、スプーンをプレートに戻す。
「どうした? もう食べないのか?」
いつのまに戻ってきていたのか、顔をあげると、いつもの飄々とした顔の蒼甫先輩が立っている。
「た、食べますよ。こんな美味しいもの、残すはずないじゃありませんか」
しんみりしていたのを悟られないよう慌ててスプーンを持ち直し、残っていたジャンバラヤを掻っ込んだ。