極上御曹司のイジワルな溺愛
「美味しい。蒼甫先輩、レストラン開けるんじゃないですか?」
お世辞ではない。
黄色が綺麗なオムレツは、きめ細かくぷるんと艷やか。口の中に入れればふわふわで、あっという間にとろけて消えてしまう。バターの香りも芳醇で、塩加減も抜群だ。
「椛、褒めすぎ。プロのシェフに怒られるぞ」
「そうですかねぇ」
プロのシェフにも負けてないと思うけど……。
トーストをかじり、キョロキョロ周りを見渡す。
「薫さんは……」
「帰ってこなかったみたいだな。今日は経営会議もあるし、そこには顔を出すだろ」
「そうですか」
昨晩のことを思い出し目線を落とすと、スープを飲もうとしていた手が止まる。
「薫さんと里桜さん。どうしたんでしょうね」
「どうした、と言うのは?」
蒼甫先輩はいきなり副社長モードに入ったのか口調が変わり、少し厳しい目を私に向けた。
「私はあのふたりを見ていて、いいお付き合いをしていると思っていました。それは私の勝手な思い込みだったんでしょうか?」
目線を上げ、蒼甫先輩を見つめる。
「さあな。まあ俺も兄貴から聞いていたわけではないが、少なからずそう思ってた。仕事のことが絡んで悪いが、里桜さんはうちには無くてはならない存在だし、事が大きくならないといいけどな」
それだけ言うと蒼甫先輩は、朝食を黙々と食べだした。