極上御曹司のイジワルな溺愛

薫さんが社長をしている『MIYABI』は、ここから歩いて五分ほどの商業ビルにオフィスを構えている。だから雅苑で顔を合わすことがなくても、特別珍しいことではない。

でも今は、里桜さんが来ている。

もしかしたら気になって、こちらの様子を窺いに来るんじゃないかと思っていたのに……。

「さあ、俺は見てないけど。今日は来ないんじゃないか?」

「そうですか」

薫さんには冷たい態度をされてしまったけれど、だからといって「はい、そうですか」と諦める私ではない。

私は薫さんも里桜さんも大好きだ。薫さんが言う通りおせっかいかもしれないけれど、ふたりには幸せになってもらいたい。

そして遠くない未来に、ここ雅苑で、私のMCで、結婚式を挙げてもらいたい。

……ってそれは、先走り過ぎか。

勝手な妄想を頭の中で繰り広げていると、たった今ひとつ挙式披露宴を終えてきたばかりだというのに、新郎新婦の幸せな顔を見たくなってしまう。

「どうした、さっきから百面相だな」

「ずっと見てたんですか?」

恥ずかしい──

「当たり前だろ。俺は椛しか見てない。可愛い顔も怒った顔も、今朝のヨダレを垂らして寝てた顔も」

「今朝って! もう蒼甫先輩ったら、それ悪趣味です」

怒ったふりをして立ち上がる。



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