極上御曹司のイジワルな溺愛

「この近くに何万年前に火山噴火でできた珍しい地層があるらしい。一見の価値があると、仲居さんが教えてくれた。なんなら私がご案内しましょうかって。良い人だよなぁ」
「そ、そうなんですか」

良い人? 私がご案内?

旅館の部屋付きの仲居さんは思っていたよりも若い女性で、蒼甫先輩を見るなり目がハートマークになったのを私は見逃さなかった。

でもいつの間に、そんな話を。

蒼甫先輩がモテるのはわかっていたことだけれど、旅先の仲居さんまでとは……。

容姿端麗、頭脳明晰、文武両道ときたら、モテないはずがない。時々、新郎がいるというのに蒼甫先輩を見て頬を赤らめる新婦もいるから仰天ものだ。

好きと気づく以前は、なんでこんなヤツがと思ったこともしばしば。でも惚れてしまい付き合ってしまうと、それがヤキモチの種となってしまった。

運転している蒼甫先輩を見つめ、小さな溜息をつく。

「なんだよ、今の?」
「いや、何って言うことでもなくて……」
「俺が当ててやろうか?」

蒼甫先輩は真っ直ぐ前を向いたまま、その顔はニヤリとほくそ笑んでいる。

「かいがいしく世話をしてくれた仲居さんに嫉妬している。違うか?」
「な、な、なに言っちゃってるんですか、先輩。そんなことあるわけぇ……」

心の中を見透かされ気が動転してしまった私は、声がひっくり返り、ゴニョゴニョと口ごもってしまう。



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