極上御曹司のイジワルな溺愛
「薫さん、そんなこと言わないの。里中さん、困ってるじゃない」
「わかってるよ。でもさ、僕はこんなにも椛ちゃんのことを想っているのに、彼女はその気持ちに全然応えてくれないから……」
薫さんはヘタリと椅子に座り込み、肩を大きく上下させて溜息をついた。
ちょ、ちょっと薫さん?
目の前に里桜さんがいるというのに、私のことを想ってるなんて、どうかしていませんか?
ここは日本ですよ? 同時にふたりの女性を愛するなんて、そんなこと許されません!
「薫さん、最低です! 里桜さんっていう素敵な女性がいるのに、そういうことを軽く言うなんて……」
軽蔑した目で訴えると、薫さんは何故か苦笑しながら困ったように眉を下げた。すぐに里桜さん見れば、彼女も同じようにクスクスと肩を揺らして笑っている。
あれ? 私いま、おかしなことでも言った?
見に覚えのないことで笑われているみたい。何、この疎外感は。
席に付き首をかしげると、肩肘をついた薫さんが面白そうに笑いながら私の方に身を寄せた。
「椛ちゃん、ごめん。どうも言葉が足りなかったみたいだね。君のことは妹のように思ってる、そう言いたかったんだ。だから心配しないで。僕が愛しているのはこの世の中で、里桜、たったひとりだけだ」
その真っ直ぐな愛の告白に目をパチパチさせて驚いていると、隣に座っている里桜さんは溜息をついた。