極上御曹司のイジワルな溺愛
「そんな目で見ないでよ」

顔をそむけると、ふっと含み笑いをした蒼甫先輩が私の右腕を掴み、そのまま引っ張り上げ自身の膝の上へと座らせた。

「キャッ」

バランスを崩し、蒼甫先輩を抱きしめるようにつかまる。

「お、積極的」
「ち、違うし。っていうか、蒼甫先輩が急に引っ張るから」
「じゃあ離れる?」

蒼甫先輩が人の悪い笑みを浮かべ私を見上げた。膝に座っているから必然的にそうなるわけで、いつもと逆の状態に少し落ち着かない。

「離れない、けど……」

私の心を読んで、そんなことを言う蒼甫先輩はズルい。

自由になる右手で頬をつまみ捻ると、「バカ」と言い放つ。

「お前だけだよ、俺をバカ呼ばわりするのは」

バカと罵ったのに大笑いしている蒼甫先輩を見て、完敗だと言わんばかりに体から力が抜けた。

「当たり前でしょ。私だけの特権よ」
「敬語、使わないんだな」
「同等な立場で話してみたくなった、って言ったら怒る?」

蒼甫先輩を見下げてそういう私の髪を掻き上げ頬に触れると、満足そうな笑みを浮かべる。

「それでいい。俺はもう、お前の先輩じゃない」

待ちかねたように近づいてくる蒼甫先輩の唇に、ゆっくりと唇を重ねる。



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