極上御曹司のイジワルな溺愛

「そう言えば椛、さっき先輩って呼んだだろ? お前時々、先輩って言うよな」

「あぁ……すみません、副社長」

「ここは職場じゃないからな、別に副社長と呼ぶ必要もないけど。俺としてはお前に副社長って呼ばれても、いまいちピンときてなかったし」

そうだったんだ。

でも副社長と呼ぶようになって、もう六年。無意識に先輩と言うことはあっても、意識して呼ぶことはなくなっている。それに副社長は私にとって直属の上司。職場じゃなくても先輩と呼ぶのはちょっと……。

まだ腰が痛むのか、副社長が辛そうに立ち上がろうとしている。その体を支え、そのまま椅子に座らせた。

「副社長、まだ痛みますか?」

「ああ。このままじゃ、今後の仕事に差し支えるかもしれない。椛に責任をとってもらうか」

責任なんて言ってニヤッと笑う顔は、何かを企んでいる証拠。

嫌な予感がする……。

ホントに腰が痛いのか疑わしいところだけど、どんな事情があれ突き飛ばしたのは事実で文句の言いようがない。



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