ETERNAL CHILDREN 2 ~静かな夜明け~

 次の日、昨日来たのとほぼ同時刻に、シロウが仕事部屋にやってきた。
 部屋には二人の他に誰もいない。
 作業を頼むクローンを、まだ呼んでいなかった。
 きっと報告だけだろうとシイナは気持ちを切り替えようとしたが、フジオミとの約束がやけに気になった。
「クローニングに入りました」
「そう――」
 シイナのはっきりしない反応に、シロウが問う。
「何か、心配事でも?」
「いえ、何でもないわ。私も、様子が見たいわ。ラボに行きます」
 ラボならば、クローンがたくさんいるはずだ。
 シロウとこれ以上二人きりになることはない。
 立ち上がったシイナは、足早に机を回る。
 だが、いつもと違い急いでいたせいか、机の脇に足がぶつかった。
「!?」
 体力が落ちていたために、ぶつかった衝撃で身体が容易くよろけた。
「博士っ!」
 シロウが咄嗟にシイナの腕を掴んで引き寄せ、身体を支えた。
 反動でシイナがシロウの腕にしがみつく格好になる。
「――」
「大丈夫ですか、博士」
「え、ええ。ありがとう。ごめんなさい」
 しがみついた腕を支えに、シイナは身体を起こした。
 その時。
「っ!!」
 シイナは、声にならないシロウの僅かな身体の震えをとらえた。
 まるで、腕の痛みを堪えるかのような、震え。
「シロウ――?」
 軽く触っただけの筈だ。
 直感が、シイナの身体を動かした。
 シイナはシロウの腕を掴み直し、白衣の袖を服ごとまくった。
「!!」
 すぐに腕を払われた。
 しかし、シイナはそこに巻かれた包帯を、確かに見た。
 シイナがペンを、突き刺したと思われる場所に。
「――」
 血の気がひいていく。
 身体が震える。
 無意識に身体が後ずさる。
 ゆっくりと、シイナは視線を上げた。
 目の前の人物の顔を見ようとして。
「――今日、こっそり医局へ行くつもりだったのに。こんなことなら、昨日のうちに行けばよかったかな」
 この場にそぐわない穏やかな声は、それでも全てを肯定していた。
「シロウ、あなたが……」
 蒼白な顔で、シイナは呟いた。
「ええ。僕です」
 平静な顔で、シロウは答えた。







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