白銀の女神 紅の王(番外編)


「それくらい俺たちへの態度を見て分かるだろう。アイザックスのことだ、権力で地元の有力貴族を無理矢理押さえつけていたこと以外考えられるか?」


普段通りの音量で答えた俺にウィルは驚いた様子をして前方を歩く執事を見たが、無視するように歩く執事を見て声をひそめても意味がないことを悟り、ウィルも普段通り「そうですね」と続けた。




「アイザックスは自身の家臣たちを各地に置いていたといいますし、この人たちはきっとその家臣たちに抑圧されていたのでしょう」


アイザックスの治世下ではアイザックスに忠誠を誓った貴族だけが優遇されていた。

俺の父である先々の王に誓いを立てていた貴族たちは皆、郊外へとばされたと聞く。

今でこそこのような立派な屋敷を構えているが、当時は屋敷というには粗末すぎる建物に押しやられ、常に監視役がついていたとか。

アイザックスの政権が終わったあとも貴族たちはこの土地から離れず、以来ずっとこの土地で暮らしながらノース地区の発展に貢献してきた。

元々この土地に住んでいた国民は、余所の土地からきた貴族を良く思っていなかったが、ノース地区に貢献する貴族たちの姿を見て徐々に気持ちを同じくしたという。

アイザックスのせいで国家の信用は崩れ落ちたままであり、一番被害の多かったイースト地区にかかりきりだったということもあり、ノース地区の民の不満は募る一方だった。



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