白銀の女神 紅の王(番外編)


「本来ならばエレナ様にこのような仕事をさせるなど言語道断だというのに申し訳ございません」

「ニーナが謝ることじゃないわ。フェルトさんのお宅にお世話になっているからには私だけ働かないわけには行かないし、今は"侍女"のエレナなんだから」


そういって微笑めば、ニーナも「分かりました」といって微笑む。




「お城に帰って私ににこき使われたーなんて言わないでくださいね?」


そんな冗談にクスクスと笑い合い、裏庭には明るい声が響いた。




「さぁ、残りも早く干しちゃいましょう。これが終わったらお昼ご飯つくらなきゃ」

「はい!」


二人でやればあっと言う間に終わり、綺麗に並べられた洗濯物を眺めて満足の笑みを浮かべる。

小さな達成感に浸っていると、干されたシーツの向こう側になにやら小さな影が二つ現れる。

何だろうかとシーツを横にずらすと、そこには幼い男の子と女の子が手をつないでこちらを見上げていた。

顔のパーツや髪の色から二人が兄妹だということが分かり、その兄妹は私を見るなり丸い目を更に丸くする。

きっと私の容姿に驚いているに違いない。




「エレナ様戻りましょう…って、アベル!ココット!?」


空になった洗濯かごを持ち上げたニーナがそういうが、私の目の前にいる兄妹の名前を驚きに満ちた声で呼ぶ。




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