白銀の女神 紅の王(番外編)
朝から晩まで毎日ここに通うアベルとココットに、最初は毎日ここに来てご両親は心配しているのではないかと思ったが、二人は孤児だとブルームから聞いた。
両親を事故で亡くし、以来、ブルームの家で養っているそうだ。
ブルームは二人の両親が亡くなった時のことを悲痛の表情で話したことを思い出し、それ以来私がアベルとココットにできることは何でもしてあげたいと思うようになった。
これが母性というものなのだろうか、二人の愛らしい瞳を見ているととても幸せな気持ちになって、いつもつられて笑ってしまう。
「エレナお姉ちゃん、今日は何するの?」
ココットが鈴の鳴るような声で私に問いかける。
「今日はね、森に薬草を採りに行くのよ」
先程ぼーっと考えごとをしていたためか私も忘れかけていたけど、今日は薬草を採りに行ってほしいと言われていたんだった。
本当は夕方に出ようと思っていたけれど、空はあいにくの曇り模様だし、今から出た方が良いのかもしれない。
そう考えていると、じっとこちらを見つめる視線を感じた。
期待と希望に満ちた瞳で見つめられ、思わずクスっと笑みがこぼれる。
「アベルとココットも一緒に来る?」
「うん、行く!」
二人は待ってましたとばかりに勢いよく返事をして私のそばに駆け寄ってくる。
「では我々も同行いたします」
すかさず前に出たのは隊長格につく護衛の者だった。
厚手のローブを身にまとい、その内側に剣を忍ばせる。