白銀の女神 紅の王(番外編)


静かになった森の中、あぁ、そういうことかと一人納得した。

ここ数日の苛立ちの原因が分かり、内心苦笑する。

分かってしまえば何のことはない、胸に巣食った苛立ちがほぐれる様に和らぎ、消えていった。

昔の俺ならこんな感情を認めることすらしなかった。

認めてしまえば大事なものが増え、その分だけ自分自身の弱みが増えると思ったからだ。



けれど、エレナに会ってそれは間違っていると思わされた。

守るものがあるからこそ人は強くなる。

何より、欲する心を制御できることなど不可能だった。

俺は自分で思っていたよりもエレナがいないと駄目らしい。





フッと自嘲的な笑みを浮かべて、再び馬を走らせようとした時だった。

森の奥で前を横切るように走って行く小さな影が目に入った。



子供……?

全速力で駆けていくのはまだ年端もいかない子供たちだった。

サウス地区に住む子供かと思ったが、いくらなんでも子供二人だけで森の中には入らないだろう。

それに、あの子供たちの横顔が何故か気になった。

苦しそうに息を上げて走っているというのに一向に止まる気配を見せない子供たちの背を追いかけた。




「おい!そこの子供」


走る子供たちの横に並び馬上から呼びかけると、子供たちは明らかに怯えの色を顔ににじませて更に走る速度を上げた。


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