白銀の女神 紅の王（番外編）

シルバが寂しがるなんて想像もつかない



ガタッ…ゴト……―――

目を開いたときには揺れる荷台の上だった。

背中は申し訳程度の布が引かれてあり、上にはドーム上に薄い布が張られている。

外は風邪が吹いていて寒いはずなのに、太陽の光が柔らかく降り注いでいた。

何度か瞬きして光に目が慣れてきた時、ひょっこりと何かがこちらを見下ろす。

逆光で一瞬何か分からなかったけれど、声をかけられてすぐに分かった。




「エレナ様、お加減いかがですか？」


丸い琥珀色の瞳が私を見下ろし、心配そうにこちらをのぞくニーナにだんだんと記憶が甦る。



「少しぼぅっとするくらい」


気だるくて重い腕を持ち上げて額に当てると、朝よりも確実に熱を持っていた。

王城を出て正解だったのかもしれない。



熱があると感じたのは今日の朝のことだった。

数日前から体が気だるくて、咳が止まらなかったのだが、今朝とうとう体調は悪化し、医官に風邪だとはっきり言われるまで悪化してしまった。




「まだ引きかけのようですから熱は微熱のようですね」


ピタリと額に当たるニーナの手がひんやりしていて気持ちいい。

ふと顔を横に向けてみれば、ニーナと同じく心配そうな顔でこちらの様子を伺う侍女と護衛の姿があった。

といってもみんなの装いは普段のそれとは違う。




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