白銀の女神 紅の王(番外編)


私…他になんて言ったんだっけ……?

確かあの時他にも何かシルバに向かって言っていたような気がする。

それは思い出せないけど、なんだか恥ずかしいことを口にしていたような…



熱をもった両頬を手で包み一人ぐるぐると記憶を辿っていると、コンコンと控えめに扉がノックされた。

隣で眠っているシルバを見て返事をしようか迷っていると、静かに扉が開いた。




「寝てるのかい?」


そう言って入ってきたのは今まで避けられていたフェルトだった。




「はい、ノース地区から夜通し馬を走らせてきたみたいで今はぐっすり寝ています」


ずっと避けられているフェルトが部屋に来たことに驚いたが、穏やかなその表情につられるように微笑んだ。





「昔はそんな風に寝ることもなかったんだがね。誰が傍にいても物音一つで起きたもんだった」


思わぬシルバの昔話に興味を引かれた私は興味を引かれたままに口を開いた。





「シルバが子供の頃はどんな子だったんですか?」


私の知らないシルバの過去を知ることができたことが嬉しく、フェルトに嫌われていることなど忘れていた。



「今とそう変わらないよ。可愛くない子供だった」


フェルトのその口振りに思わず笑ってしまった。

確かにシルバが駆け回って遊んでいる姿など想像できない。

フェルトも昔を思い出したのか口元に笑みを浮かべる。

シルバの寝顔を見つめる穏やかな表情は母親のように優しかった。



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