男なら♪
「あれ?」

 佐奈田はまず、驚いた。住所は公園だったからだ。

 男なら道場は存在しないのかと、あきらめて公園を出ると、隣に空き地があった。

 そこにはプレハブの建物だけだった。

「ん?」

 佐奈田はチラッと見た。

『男なら道場』と、書いてある木の看板がドアの横にあった。

「ここだ」

 と、佐奈田は言って、疑いもなく、ドアを通った。

 室内は畳み張りであるが、物はなく、中央で横になりながら、道着のおじさんが一人漫画を読んでいた。

 佐奈田のけはいで、道着のおじさんは気がついた。
「あれれ、新聞の集金なら……じゃ、ラーメンの集金か? それとも飲み屋のツケを払って?」

 と、道着のおじさんは佐奈田を見て言った。

「あの広告を見たんですが……」

「そうか。そっちの方か。でも、いつの雑誌だ。それとも新聞? スポーツ新聞なら、何でもおおげさに書くから困っちゃうんだよ」

「一日体験できたんですけど……」

 と、佐奈田はおそるおそる言った。
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