狂い咲く【TABOO】
狂い咲く
明るいライトに珍しく目が眩んだ。
あたしは今、とても複雑な気持ちを抱えて、カメラの前に立っている。
ドラマの撮影。最近やっと、コンスタントに仕事がもらえるようになった。
準備はいいですかとADに問われ、笑顔で頷く。目の前には、今回恋人役を勤めるイケメン俳優がいた。
今から撮影するのは、あたしにとっても、この俳優にとっても初となるベッドシーン。設定は“初めて結ばれる二人”。
リアルの恋人であるADの彼が見ている前で、カメラが回り出した。
相手役の俳優とまずは唇を重ね、服を脱がし合いながらベッドに倒れ込む。
深夜枠のドラマであるため、多少過激な演出。俳優の唇が首筋を撫で、熱い掌が肌を滑る。
今、あたしは恋人がじっと見てる前で、他の男に唇を許し、素肌を合わせ、そして、本気で感じていた。
閉じた瞼の奥に、確かに恋人の視線を感じ、その、形容しがたい感覚に五感が研ぎ澄まされ、肌が熱くなっているのだ。
演技として感じているつもりが、本気になっている。
恋人にしか見せたことのない、いや、もしかするとそれ以上の表情を、しているかもしれない。
監督からの声はまだ、届かない。唇が微かに開き、その妖艶さを俳優の唇が上手に隠してくれる。
ライトで眩んでいるのか、感じて頭が眩んでいるのか、押し寄せる波に思考が寸断され、もうわからない。
彼は、こんなにも狂っている恋人を、どう見ているのだろう?
fin
あたしは今、とても複雑な気持ちを抱えて、カメラの前に立っている。
ドラマの撮影。最近やっと、コンスタントに仕事がもらえるようになった。
準備はいいですかとADに問われ、笑顔で頷く。目の前には、今回恋人役を勤めるイケメン俳優がいた。
今から撮影するのは、あたしにとっても、この俳優にとっても初となるベッドシーン。設定は“初めて結ばれる二人”。
リアルの恋人であるADの彼が見ている前で、カメラが回り出した。
相手役の俳優とまずは唇を重ね、服を脱がし合いながらベッドに倒れ込む。
深夜枠のドラマであるため、多少過激な演出。俳優の唇が首筋を撫で、熱い掌が肌を滑る。
今、あたしは恋人がじっと見てる前で、他の男に唇を許し、素肌を合わせ、そして、本気で感じていた。
閉じた瞼の奥に、確かに恋人の視線を感じ、その、形容しがたい感覚に五感が研ぎ澄まされ、肌が熱くなっているのだ。
演技として感じているつもりが、本気になっている。
恋人にしか見せたことのない、いや、もしかするとそれ以上の表情を、しているかもしれない。
監督からの声はまだ、届かない。唇が微かに開き、その妖艶さを俳優の唇が上手に隠してくれる。
ライトで眩んでいるのか、感じて頭が眩んでいるのか、押し寄せる波に思考が寸断され、もうわからない。
彼は、こんなにも狂っている恋人を、どう見ているのだろう?
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