偶然の先にあるもの
 学校は自宅から約一時間かかる。朝の電車は好きではない。人がかなり混雑していて、身動き一つとることができないから。

「日向、こんな狭いのに本を読むの?」
「文庫本だから心配ないよ。ほら、ちゃんと人の邪魔にならないようにしているから」

 人にぶつかってしまうときは流石に読まない。

「こんなに人が多いのに集中して読めるの?」
「もちろん。本の世界に入ってしまえば、特に気にならないよ」
「着いたら教えるね?」
「お願い」

 駅に着くまで本を読み続けた。展開が面白くなってくるところで肩を叩かれ、窓の外を見ると、駅に着いてしまった。改札口を出ると、同級生の子達と挨拶を交わし、テストについて話しながら校門を潜り抜けた。

「今日、何時くらいに家に帰るの?」

 階段を上ろうとしたとき、お姉ちゃんに訊かれたので、遅くなりそうだったら電話をすることを伝えた。教室に入ると、クラスメイト達は教科書を読んでいたり、ノートや問題集に問題を解いている。
 いつも賑やかな雰囲気だが、シャーペンを走らせる音や教科書のページを捲る音が教室中に響き渡っている。

「日向、勉強した?」

 友達の一人が教科書を片手に私に話しかけた。

「まあ、少しは・・・・・・」

 本当は長時間かけて勉強をしたなんて、えらそうなことを言う気はない。一時間目は日本史なので、教科書を出し、赤ペンでチェックしたところを頭に叩き込もうとしたとき、友達に問題の出し合いをしようと提案されたので、それに応じることにした。チャイムと同時に先生が答案用紙と問題用紙を持ってきた。自分の席に着こうとする友達にお互い頑張ろうという意味で笑みを浮かべると、向こうもそれを返してくれた。
 時計をときどき見ながら問題を解いていき、すべて書き終えたあとは何度も間違いがないか見直しをしていた。 一時間目が終わり、二時間目になる前に数学の問題を解いていた。

「テストが終われば自由」

 せっかくだから他のところも行ってみようかな。
 本屋の近くに雑貨屋や飲食店など、他にも店があるのでそっちにも足を運ぶことに決めた。
 次の数学のテストは日本史より簡単だったので楽勝だった。
 テストはあっという間に終わり、いつもよりたくさん答えを書くことができて安心した。

「やっと終わった」
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