鏡の国のソナタ
不思議だった。

めちゃくちゃ嫌なヤツで、大嫌いなはずなのに、なんだか許せるような気がしていた。

素奈多は、クランの差し出した長い菜箸をとった。

やきそばを不器用につまんで口にはこぶ。

「美味しい……」

おなかの中が暖まると、心にも余裕ができたような気がした。

この焼きそばは、クランなりの優しさなのだろうか。

素奈多は熱いフライパンで変色した床を眺めた。

ナチュラルカラーのフローリングがきつね色になっている。

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