鏡の国のソナタ
素奈多は、あいつのために泣いている自分が許せなかった。

知らず知らずの間に、思い上がっていたのだ。

あいつは、自分だけの存在だと思っていた。

でも、彼が先輩のコピーであるというだけで、普通の人間と変わらないならば、自分以外の他の女の子と恋に堕ちることだってあるはずだ。

花南といっしょに出ていってしまった後ろ姿を見送って、そんな畏れに捕らわれた。

さんざんぼろくそに言ったうえに、ちっとも優しくしてあげなかったのに、それでも誰かに渡すのは嫌だと思った。

そして、そんな自分がもっと嫌だった。

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