蒼い時
「可愛いだろ~」


事あるごとに、一人娘の写真を見せる。


「社長、少しは社内でもそんな感じを出せませんか?」


「俺が社内でそんな顔したら、社員が引くだろう」


二人きりの車内で大笑いする。


「私の前だと、いつもそうじゃないですか」


「まあ、特別だ。お前だけだな、はっきりと批判するのも」


確かに、取締役や役職には、銀行やファンド出身者が名前を連ねていた。


孤独なのだと思う。その心情は私にはわからない。


「社長にもの申せるのは、佐野さんだけですよね。漫才みたいですもの」


社長の美人秘書が、耳打ちをする。


「佐野さんが同乗されると、気が楽なんですよ。いつもはピリピリして大変なんですから」


専属の運転手もそう話す。
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