光源氏の腕の中【仮】
私に会うため?

・・・

「この部屋で勉強してるのも、

わざと・・・

私が一芝居打ちました」


「…お菊さん」


「しばらくしたら、

お偉い様方は、部屋を移り、

違う話になりますので、

帝様も共に、そちらへ・・・

その時に、源氏の君様がこちらへ参りますので、

今しばらく、お待ちください」



「・・・ありがとう」



私がお礼を言うと、

お菊は嬉しそうに微笑んだ。

・・・

どれだけ時間が過ぎたのか、

私はふすまの向こうにいる光の声だけを、

目を閉じ、聞き入っていた。

いつの間にか話が済み、

移動したのにも気づかなかった。

・・・

目を閉じたままの私を、

温かな腕が、ゆっくりと包み込むように、

抱きしめた。
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