かぐや皇子は地球で十五歳。

──────────ガラッ

 勢いよく保健室の扉が開いた。栗林だ。俺と目が合うなり血相を変え拳を握りしめている。

(……まさか今の話を聞いていたのか。)

「ゆ………湯浅くん~!よがった~、死んじゃったかとおもっだ~!」

 酷い面で突進してきた!
 あんな強烈な踵落とししといて罪悪感あったのか!あ、思い出して肩が痛みだした!
 布団に泣き伏せる栗林を立川がからかう。

「栗林~、湯浅を保健室行きにさせるなんて、なかなかの強者だなぁ。」
「う……ぁあ、た、立川先生!?ほ、本当にすみません……!」

 パーテーションの死角にいた立川の存在に気付くと、栗林は五時限目の理科の教科書と筆箱を胸に抱き、針金みたいに直立した。

「……の割りには、結構可愛い趣味してんのな。クマちゃんの筆箱にノート?あ、ストラップまでクマちゃんだ。あはは。」
「───────────!!」

 まずい立川、そこに触れてはならない……!俺と坂城が今まで見て見ぬふりを決め込んできた禁忌領域だ……!
 さようなら、親しき侍従よ!
 保健室の床に沈め!
 ほれみろ、栗林の顔が鬼の形相に──────────

「じ、じゅぎょーが始まるので、わ、私いきます、し、しちゅれいしました!」

 …………え?
 歌舞伎町の女王が萌えっ娘になってりゅよ?どうした、栗林!何可愛い顔してうつ向いてるの!

「んじゃ、先生もいくわー。じゃな、湯浅。」

 立川にせっつかれた栗林は鉄拳は繰り出さず教科書とクマちゃんグッズを胸に抱いたまま、真っ赤なお顔で退室したのでした。
 振り向き様の侍従は満面の笑み。


「え?…………マジ……すか。」


 俺の侍従、JCに手ぇ出しちゃったよ!

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