かぐや皇子は地球で十五歳。
 六時限目は音楽。教室には誰もいない。三階の教室へ一気に駆け上がり学生鞄を掴むと下駄箱までまた駆け下りた。

「仮病早退?悪い娘だなぁ。」

 背中越しに聞こえる、にやついた声。靴を履き替え校外へ出ようとした矢先に立川に捕まってしまった。

「ホームシックです。門限の4時には柏木家に戻りますから。」
「なるほど重病だ、これは失敬。アメリに伝えておくよ。」

 本来ならとんでもない不良教師だが、快く送り出してくれた立川に感謝し真っ直ぐ自宅へと向かった。総ての真相を知るのなら母の口から聞きたい。駄々を捏ねて、思いきり泣きたい。なんで私なの。なんで私ばっかりこんな目に合うの。お母さん、助けてよ。お母さんが私を守ってよ。

「お母さん───────」

 駆け戻った我が家に母は居なかった。新聞紙とチラシが一枚もないピカピカに磨かれたテーブル。山積みされた煎餅とチョコが消えたダイニング。空のコーヒーメーカー。
 父の遺産があるからと、母は職に就いていない。一日中リビングのソファで寛いでる、そんな怠け者だ。
 玄関へ戻ると、なるほど突っ掛けひとつ見当たらない。留目に和室へと廊下を逆戻る。
 父の写真と遺影の無い、空っぽの仏壇。
 徹底的だった。
 母は消えた。

「あははは………。」

 
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